【社会人が読んでおきたい一冊】平川克美著 路地裏の資本主義
今回、「路地裏の資本主義」という本を読んでみました。
昭和的な、どこか懐かしさを感じる表紙のこの本ですが北海道新聞に不定期に連載されていたコラムを加筆・修正して本としてまとめあげたものです。
この本は2015年に出版されたものです。
この本で書かれているグローバル資本主義はより浸透し、アベノミクスは明らかに失敗だったと体感的にわかってきてはいます。
4年前の本ですが、物事の本質は変わっていないのではないかと思います。
現在、資本主義社会のなかに生きています。
一昔前に「社会主義」・「資本主義」という対立する概念はありましたが、生まれた頃にはすでに出来上がっていた「資本主義」という概念に対して、ぼんやりとした考えは持っているものの、具体的に考える習慣はなくしてしまっていることが多いのではないでしょうか。
例えば、「資本主義」といえば、「株式会社」です。
生まれた頃から身近に「株式会社」があった自分達からしてみれば、「株式会社」がなかった世界というのは想像しにくくなっています。
こういった当たり前のようで、普段考えないことを理論立てて積み上げていけば自分達の住んでいる世界の輪郭がおぼろげながらに見えてくるのではないのでしょうか。
この本では穏やかな文章で「貨幣について」「資本主義とはなにか」「インターネットについて」「教育と正義」「コンビニが失わせたもの」「株式会社」「家族の多様性」などが幅広く語られていきます。
本の巻頭で「資本主義」について語られておりますが、この本の底に流れている考え方として語られているのは東京の下町に対する憧憬や古き良き時代へのノスタルジーではないかと感じます。
資本主義というものは人間の本質をあらわしています。
資本主義はマルクスが資本論を著した当時の「産業資本主義」から「消費資本主義」「金融資本主義」「カジノ資本主義」「強欲資本主義」と変化を続けて現代では「グローバル資本主義」として世界を覆っています。
最後に自分の心の中に残ったフレーズがあります。
人は自分が思うほど自分のために生きているわけではない
P86の著者の父親への介護経験を通して得られた言葉です。
人が幸せに生きるためにはそこから考えるしかないのではないかと感じらさせられます。
この本は「路地裏の資本主義」ではなく、もっと他のタイトルのほうがよかったのではないかと感じます。
政治家たちが戦後の経済成長の惰性で「無限の経済成長路線」を描く中、誰が、なんのためにそれを振り回しているのか。
それが大勢の幸せにつながっているものなのか考えてしまう一冊です。